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『暗い日曜日』

それぞれの想い

「春声@さんの感想への感想」

"あじ塩"さん

最後がちょっと「ネタばれすれすれ」かなぁ・・・
というわけで、これからレイトで見に行くぞ!と思っていらっしゃる方は、読むならそのあとにしたほうがいいかも。

春声@さんの感想で、
> これは三角関係になるべき男女構成なんですが、この二人の男性は、イロナをめぐって彼女をシェアしているところが大特徴。女性にとっては“考えられなくもない関係”だそうで・・・

この部分は、その発言の出どころを推察するに「あじ塩にとっては」としてもらった方が正確ですよね(笑)。きっと異議のある女性もいると思うので。でも、誤解を招くといけないので弁解させてもらいますと、

> 男性側の私としては、“女に対する独占欲が生じないのかな?”と、そればかりが気になってしまいます。

それはわかるし、気になるし、つらいですよ。二人の男性があれだけ苦しむさまは。 でも、あじ塩が思うに、イロナも含めて、あじ塩も含めて、女性(の多く?)は「ものにはすべて終わりがある」ということを、心のどこかに意識しながら生きている、ように思うんです。 とても幸せな状況にあって「ずっと続いてほしい」と思いながら、でも、ふっと「いつまでも続くわけじゃない」と思っていたり。
反対に、どんなにつらい状況にいても「いつか終わりがくる」ことを知っている。それが「いつか王子様が」や「明日は明日の風が吹く」になるのかなぁ、と。
男性は、そういう時、「終わりがくる」と信じるのでなくて、自分で「終わりにしよう」とする。 だから自力で抜け出す人もいるけど、絶望して究極の脱出手段をとる人も、女性に比べると多いような気がします(もちろん女性にだって自分で抜け出す人もいるし、絶望してしまう人もいますけど)。
ナチスの影が濃くなってくる、ラズロはユダヤ人である、アンドラーシュは自作の「暗い日曜日」という曲とともに糾弾されるようになる・・・
状況がどんどん悪くなる中で、ラズロ、イロナ、アンドラーシュの関係は、まるで三竦み(さんすくみ)のように、危ういバランスをとっている。誰かひとりが欠けたら、他の二人だって存在できない。 単なる二人の男と一人の女の“三角関係”ではなくて、一人の男と一人の男と一人の女の、ガラス細工みたいにこわれやすい、本当の“三角の関係”。
そしてこの関係に必ず「終わりがくる」ことを、最も強く感じていたのは女(イロナ)だったのではないか。 終わりを感じていたからこそ、みずから壊すことはできなかったのではないか、と。
そして、この暗い状況に必ず終わりがくることも感じていたんだと思います。 だから、どんなことがあっても生きぬこうとしたんだろうと。
だから、映画の最後に出てきた“彼”はいったいだれか、なんて、どうでもよくなります。 映画でも、いっさい説明されないし、ヒントすらも与えられない。
「誕生日おめでとう、ママ」この言葉だけで充分です。
ところで、パンフレットに田中千世子さんという映画評論家が、 ラズロの提案によって三人の男女の愛が“ロマネスクな形をなす”ことについて、 男が“ラズロだから”、そして相手が“イロナだから”存在し得た愛の形だ、と書いておられました。 なるほど・・・
そして、朝日新聞の6月3日付夕刊「銀の森へ」では、 沢木耕太郎さんが“男と女の物語としては物足りなさが残る”と書いておられます。うーん・・・
なんと、いろいろな見方のできる映画だこと!!

"春声@"さん

『暗い日曜日』を語るなら、読むなら、一度はシャンソン「暗い日曜日」を聴くことを お勧めします。
ドイツ・ハンガリー合作映画『暗い日曜日』では、ピアノ曲としてもバックグランド ミュージックとしても、そしてなんと女主人公イロナが、ナチス軍人に脅かされ、せっ ぱつまった状況の中で歌うボーカルとしても聴けます。
1940年代、ハンガリー・ブタペスト、死へ誘う、禁じられた旋律
“Gloomy Sunday”A Woman Between Three Men A Deadly song In a murderous era と惹句がついたドイツ・ハンガリーの新作映画。
監督/脚本:ロルフ・シューベル、エリガ・マロジャーン、ステファノ・ディオニジ、 ヨアヒム・クロール ベン・ベッカー他出演。
一人の女をめぐってピアニストとレストラン経営者の男性の割合単純な痴情めいた物語 だろうと、ややたかを括っていたら、なかなか複雑な政治情勢なども織り込まれた展開で、 唖然とし、かつまた結構それが面白かったのです。
ピアニストが例の『暗い日曜日』を作曲する。暗い目をした憂鬱そうなマスク。レストラ ンのマネージャーの女友達であるイロナを好きになり彼女に捧げた音楽が「暗い日曜日」。 これは三角関係になるべき男女構成なんですが、この二人の男性は、イロナをめぐって 彼女をシェアしているところが大特徴。女性にとっては“考えられなくもない関係”なんだそうで――。
女性側からは考えられるとしても、男性側の私としては、“女に対する独 占欲が生じないのかな?”と、そればかりが気になってしまいます。
まあそれは遠いハンガリー、ブタペスト二次大戦前の話でもあり、是認するとして――。
ここで男性群にもうひとり主要人物が登場。ドイツ人で、戦争が始まるとナチスの将校 に昇進していくハンス。4人が戦時下のブタペストで一軒のレストランを舞台にドラマチック な人生を送った話。からんでくるのが“死へ誘う、禁じられた旋律”である”暗い日曜日”という歌。
最後に素敵な筋立てが用意されていて、これが結構話題になる仕掛けでもあります。
あれって一体なんなの?一体全体?この最後の点、実は私はっきりとは理解できていな い。つくずく女性の心理と生理の摩訶不思議さ、あくことなき男の生存本能またそれが絶望 的になった際のあっけない生の終結、そんなことを思わせてもくれました。
男どもは死して、女は切なくも“たくましく”生きたという“暗い時代”のおはなし、 こう括ってしまったら皮肉にすぎましょうか。

"あじ塩"さん

第2次大戦前夜のハンガリーのブダペストが舞台です。
レストランのオーナー、ラズロ。そのパートナー、イロナ。そこにあらわれるピアニスト、 アンドラーシュ。敵役(結果論としてはそうなるんですけど)のドイツ人、ハンス。
時代背景、二人の男と一人の女、レストランのオーナー、ラズロという名前、ナチスの 影、全編をとおして聞こてくえる美しいピアノのメロディー(「暗い日曜日」というシャ ンソンの名曲)・・・とくれば、まず『カサブランカ』を連想しますが、リックやエルザ やラズロのような強い意志をもったヒーローやヒロインは、この『暗い日曜日』にはひと りもでてこない。ただ、自分の欲望に忠実な、どちらかといえば弱い人間ばかり。そこに とても好感がもてました。
弱い、脆い存在同士のラズロ、イロナ、アンドラーシュが、ぎりぎりのところで愛をシ ェアしようとする選択がせつないです。状況はかなり違いますが、昨年のアジアフォーカ スで見た『夜に逃れて(夜奔)』が思い出されました。
最後に、私、個人的には史上最強の驚きのオチ(笑)が待っていました。
ちょっとふざけた言い方かもしれませんが、このオチが「お行儀のよい恋愛+ナチスの 悲劇」の物語に終わってしまいそうだったこの映画を、「血肉の通った等身大の人間ドラ マ」にしたように思いました。そして、それが「ただのメロドラマ」にまでは堕ちてしま わないところが、この作品が本来持っている力なのかな、とも。
久しぶりに、原作を読んでみたい映画、に出会いました。
音楽も良かったです。たぶんサントラを買ってしまうだろうと思います・・・
ところで、ラズロを演じたヨアヒム・クロールが前田吟に見えて仕方がなかったのは、 私だけでしょうか。

"羊の羽"さん

『暗い日曜日』の感想としては、意地の悪い映画だな〜と思いました。
しっとりとしたヨーロッパの恋愛映画と思ってみていたのに途中から、夢から現実に無理やり引き ずり出されるような感覚を味わいました。
あのおちにはまいった、映画とはそもそもエンターテイメントですよ、といわんばかりの展開ですもんね。『アザース』なんか も、そういったおちがありましたが、またそれとは違ったおちだと思います。
『アザーズ』の場合は、エンターテイメントであることを忘れてみていられますが、 『暗い日曜日』はそのエンターテイメントさを表に出した映画に思えます。そういう意味で、新しい感じの映画でした。
ヨーロッパの映画ではエンターテイメントぽさを前面に出さないものが多いと思うので。

"伊之助"さん

推薦者が多い「暗い日曜日」を今日見る。見逃して人生損しないように−−。
久々に感激しました。これが映画って感じの壮大なドラマですね。
最初30分くらいは、このへんな恋愛関係はなんじゃいな、と思いながら見てい た。どこがこの映画いいのだろうって見てた。時代の波に呑まれて、ナチスが台 頭し侵入し始めてからえらい緊迫したドラマになってましたね。こんな感じの映 画大好きです。
この女性1人を中心にした三角関係、四角関係というほうより、狂った人間たち −ナチスの人間−の異常さに目が行ってしまった。あのジョーク素晴らしい。
収容所で義眼の所長が、1人のユダヤ人にどちらの目が義眼が当ててみろ、と言 った。当てたら命を助けてやる、とか。「右目です」「どうしてわかった」「右 目がとてもやさしそうだったから」義眼がやさしそうだった。本当の目は激しい 憎悪の目だったのだろう。
良い映画に出会って−内容はシビアですが−幸せな気分になりました。映画って 素晴らしい。改めて思いました。見てよかった。

『家路』

春声@
『家路』Je rentre a’ la maison 2001年
ポルトガル=フランス合作 90mins
カラー 配給:アルシネテラン
マノエル・ド・オリヴェイラ監督 ミシェル・ピコリ カトリーヌ・ドヌーヴ
ジョン・マルコヴィッチ アントワーヌ・シャペー レオノール・シルヴェイラ
シルヴィー・テステュなど出演
2002-05-18シネサロンパヴェリア
『メフィストの誘い』の監督だし、難しい映画を作る監督だとの先入観を持っていま した。その後『アブラハム渓谷』をビデオ鑑賞して面白いと思い直していたところ。 昨年の『クレーブの奥方』はごくわかりやすい作風でしたし私、一息ついてはいました。
今年に入っての『家路』も難しくはなかった。当年93歳のポルトガルの監督ということ で言語はポルトガル語だろうと予想していたが、合作映画でフランス語になったのはい たし方ありますまい。もっとも言語が理解できるわけではなく、親近感や個人的興味の 問題だけなんですが。
舞台人として、家庭人として年齢的老いを感じていなかったかのように振舞う主人公、 (ミシェル・ピコリ)にも抜きがたく老いは加わっていく。 気鋭の映画監督(ジョン・マルコビッチ)に出演を請われ、メガホンの前で演技をして いく彼。突如“Je rentre a’ la maison”(I’m going to my homeみたいなこと) と言って、撮影現場を離れていく彼。よろめきつつ家のドアにたどりつく彼。 そういう老人の姿に、オリヴェイラ監督は自分のきたるべき姿をみているのだろうか。 主人公にはテレビ出演の仕事もくるけど、自分の主張というか肌合いが合わないのか 毅然として断る主人公。J・マルコビッチ演じる映画監督は「ユリシーズ」という世界 的有名文学作品の映画化の仕事を持ってくる。
こういう風に仕事を選べるというのはあっぱれな気骨と能力の所有者ではありましょう。 ただ、人は老いていくのは自然の摂理。孫であるぼうやが一人心配そうに見守っている。 そんな坊やを周囲にもっているだけでも彼はしあわせな老人だと思います。 ただ映画としてそれ程インパクトを受けるというような作品ではなかったと正直に私は 告白します。
93歳のオリヴェイラ監督、昨年10月次の新作撮影に入ったという。世の中、 すごい人もいるものだと感心します。

『マルティナは海』

春声@
『マルティナは海』Son de Mar(海の音) 2001年 スペイン100mins配給:GAGA
製作:アンドレス・ヴィセンテ・ゴメス 監督:ビガス・ルナ
脚本:ラファエル・アスコナ
出演:レオノル・ワトリング ジョルディ・モリャ エドゥアルド・フェルナンデス
2001/05/18 シネリーブル博多駅
「原作の小説”Son de Mar”マヌエル・ビセント著はスペインのアルファグアラ賞 1999受賞のベストセラー。監督が『ハモンハモン』92、『おっぱいとお月さま』93 『裸のマハ』2000 のビガス・ルナ。地中海を愛し、作品の舞台としてこだわり続 けるビガス・ルナとの幸福な出会いがこの映画で実現した。 女優に選んだのは黒い瞳新星レオノル・ワトリングは早くもペドロ・アルモドバル の次回作に主演が決定。
“躍進めざましいスペイン映画界”――『オール・アバウト・マイ・マザー』 『オープン・ユア・アイズ』『ミタクルペティント』『パズル』『蝶の舌』とここ のところ好調。ハリウッドを視野に入れた若手と、自分の生まれた土地と自然そこ で培われた文化や人間にこだわり続けるベテラン。そのバランスの良い競合関係が、 スペイン映画界の活性化に繋がっている。」以上チラシを参照しました。
(感想)
男ってどうしようもない。あれほど惚れこんで結婚した2人だったが、ある時 出かけて行ったパーテイーでふと知り合った超きれいな“Vestida roja”(赤い服の 女の人)と船遊びにフラフラと――これが男の常?自然の性(さが)? きれいで情愛深いマルティナみたいな人を奥さんにしていて、なおかつ、この体た らくでは、海の神様も声高くか沈黙のうちにか、男(セリウス=学校の文学の先生) を非難し厳罰を下すんだ。あれはやってはいけない事だったんだ!。 しかしそう理屈どおりにいかぬのが男の世の常。そうしてしまったからには、あと はグイグイとcata’strofe(破局)へ向って。
舟遊びの顛末と、マルティナの再婚があり突然電話がかかってきてドラマは大展開。 “愛”の葛藤劇。高層ビルの最上階で密会するマルティナ。愛の逃避行。 海は知っているのだ−“愛とその大いなる代償とを“。 こういう感じで楽しめましたし、人生訓みたいなものを再確認?出来た映画でした。 地中海沿岸なんですね。バレンシアっていう地名も出てくるし。 港にmariscos(魚などの海産物) の屋台が出ていてマルティナが買い物をするシー ンがあります。イカやエビは字幕で出た。
スペイン映画のシナリオって中には出版されるのもあるようだ。見てみたい。
先日はNHK・BSで『汚れなき悪戯』をやっていましたね。

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