『ともだち』
1961年/モノクロ/16ミリ/61分/岩波映画製作所
製作:小口偵三/脚本:秋浜悟史/演出:時枝俊江/撮影:藤瀬季彦
録音:安田哲男/音楽:三木稔/解説:臼井正明
舞台:東京都目黒区 私立平塚幼稚園
登場する先生:藤村美津先生

初めて集団生活を経験する4歳児の、幼稚園入園から夏休みまでの記録。お話を作るのが大好きなみーこと、やんちゃ坊主ぼーちは家が隣同士の幼なじみ。ちょっと引っ込み思案のおおはしせいじくん、フロンティア精神旺盛なあおやまひろしくん・・・。個性豊かな子どもたちが集団の中で日々成長する姿をみせてくれます。

【作品解説】
『ともだち』は、その撮影当時、機動力のあるノイズレスのカメラがなく「カメラの回転音がマイクの邪魔をし、カメラが接近すると子どもの前にマイクがあって邪魔をする」という状況で、「音は画に従属するものなのか。独自性があってもいいではないか。両方の最大限のよさをぶつけ合ったらどうだろう」と試行錯誤を重ねた結果、映像と音声は必ずしもシンクロしていません。その隙間を埋めるようなナレーションと、子どもの気持ちをあらわすライトモチーフのような効果音楽のおもしろさが映画の魅力を高めています。時枝監督の「映画的設計力が透けてみえる(土本典昭監督)」とも評された作品です。


『子どもをみる目』
1978年/カラー/16ミリ/45分/岩波映画製作所
製作:田中勝志・藤瀬季彦/企画演出:時枝俊江/撮影:八木義順
録音:佐久間俊夫/ナレーション:伊藤惣一
舞台:東京都中野区立 東中野幼稚園
登場する先生:吉田真弓先生

すっかり仲間同士の社会を作り上げた幼稚園年長組の子どもたち。なかでものぼるは人望の厚い、頼れるリーダーです。でも、周りのみんながのぼるにくっついて回るだけの状況になってしまったことが先生には気がかりです。のぼるが幼稚園を休んだある日、先生は思い切ってのぼる抜きで新しい遊びを始めるようにみんなに仕向けるのですが・・・

【作品解説】
『子どもをみる目』では、保育者からの要望に応えて、子どものあるがままの姿を記録することに最大の注意が払われています。専門の保育者も舌を巻いた時枝監督の"子どもをみる目"の確かさと、「撮影の合間にできるだけ子どもに接して子どもたちの性格をおぼえた」「ひとりの子どもの表情から、他の子どもの次の行動を予測できるように心がけた」という撮影スタッフの努力が結実した作品です。


[時枝俊江監督]
岩波映画創立期からドキュメンタリストとして活躍。東京都国立市公民館の婦人グループの活動を、『町の政治・勉強するお母さん』(1957年)で記録その活動の助言者である藤村先生の保育を記録した『ともだち』(1961年)以降、<幼児教育>は監督のライフワークの一つとなる。他に文化財、 歌舞伎、文革期の中国、最近では地域医療の問題に焦点をあてた連作など、幅広い創作活動を 続けている。
[藤村美津先生]
1954~2000年、平塚幼稚園で乳幼児期の子どもたちの発達研究、並行して1978~2000年、週に一度国立市公民館保育室活動、母親の共同学習に取り組む。その活動は『育児力~子どもの成長・おとなの成長~』(共著)でも紹介されている。2001年4月よりエリザベス・サンダースホーム(児童養護施設)園長に就任。児童虐待・不登校など社会のひずみから発した 問題を背負った子どもたちと向き合っている。